ハウスメーカーの坪単価の信憑性
家を建てる際によく出てくる言葉がこの「坪単価」というものです。
住宅の仕事に携わる私たちも一応参考にはしますが、あまりあてにはしてはいません。
何故ならば、会社ごとに基準が違い、統一の決まりがないからです。詳しく見ていきましょう。
注文住宅の坪単価とは?
坪単価=価格(建築費)/面積のことです。しかし、この「価格」と「面積」に共通の基準が無いため、「坪単価」が表すものがバラバラで、ある意味どうにでも操作できる数字なのです。
設計や定義付けによって数字が大きく異なるため、カタログ上の坪単価は消費者にとって混乱を招くものです。反面、中身をよく分析すればこの坪単価の出し方が企業姿勢を判断する材料となります。
価格は何を指すのか?
住宅メーカーに聞くと「うちは坪○○万円位ですよ」という声が返ってきます。しかし、「価格」には何が含まれていて何が含まれていないのか、よく確認しないと根拠がはっきりしません。
分子である「価格」の数字を減らせば、坪単価は下がります。そのため「価格」から「オプション」を除くなどの「数字のトリック」で操作がされます。
この「オプション」も何を指すものなのか、会社によってまちまちです。「照明器具」「屋外給排水工事費」「地盤改良費」などがその代表ですが、施主としては「全部でいくらかかるのか知りたい」訳ですから、見かけだけのテクニックは使わないでほしいものです。企業の姿勢もうかがい知れます。
比較ポイント「価格の表示方法で企業姿勢を知る」
住宅メーカーの見積りを比較するならば、自分で「価格」が指す金額を定義し、その住宅メーカーの「真の価格」を再評価して比較することが必要です。
価格は建物の形状に左右される
坪単価・価格(建築費)は、建物の形や大きさに左右されます。
形状に凹凸があると「役モノ」と呼ばれる特殊部材の分量が増える分、材料が高くなり、施工の手間も増えるので工事費も高くなります。
また、面積が大きいほうがコストのかかる水周り(キッチン・バス・洗面・トイレ)の比率が、全体に対し少なくなるので、坪単価は小さくなる傾向にあります。
平屋の場合は、同様にコストがかかる基礎と屋根の面積が大きくなるので、2階建てに比べ割高になります。
同じ図面・同じ条件で住宅メーカーに見積りを出してもらうなら、比較もしやすいですが、設計も含めて考えてもらう場合、総合的な判断が必要になります。
住宅メーカーには事前に予算を伝え、コストを考慮した設計をしてもらうほうが比較もしやすく、計画もまとまりやすくなります。
比較ポイント「価格だけでは判断できない。設計を含めた総合的判断をする」
床面積は何を指すのか?
標準的な坪単価を述べる場合、カタログ上の「床面積」は建築基準法で言う延べ床面積を指すのが一般的だと思われます。
しかし、「価格」と同様に坪単価を少しでも安く見せるために、「数字のトリック」を使う住宅メーカーもあるようです。具体的には、延べ床面積に含まれないポーチやデッキ、吹抜けなどを含めた「施工床面積」というものを使うものです。これは表現に法的な規制が無いため起こる現象です。
実際の計画ではこちらのほうが現実的だという考えもありますが、あくまで基本スペックと追加要素は分けて考えた方が良いでしょう。
比較ポイント「坪単価の床面積を定義するなら基本スペックで」
住宅メーカーの見積りを比較する際は、自分で「床面積」の定義を決め、それにより算出した「統一基準の坪単価」により比較することが必要です。
注文住宅の坪単価から何を掴み取るか?
これらのことから「坪単価」は単純にあてにすることができないと言えるのです。
判断の基準は?
何かしら比較する基準が定まらない限り、比較することはできません。でもやはり気になってしまう数字のようです…。それでは何を目安にしたら良いでしょうか?
坪単価は自分で独自に算出し比較するとして、ほかにも確認しておきたいことがあります。
それは、実例としてどのくらいの価格帯(最終的にかかった額)で建てる方が多いのか、ということです。
それにより、どういったグレードの家を建てているか(「いい家」の基準は価格だけではありませんが)、そのメーカーの得意なスタイルがどんなものかが見えてくるはずです。
料理と同じように住宅メーカーにも得意な専門分野があります。「どんなグレードにも対応できます」というスタンスは、意気込みとしては感じられますが、やはり作り慣れた商品のレンジがあり、それを頼りに選ぶ方が無難です。
坪単価はまやかしと思い、囚われることは避けたほうが賢明です。
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