木材の乾燥
木材は乾燥すると割れや狂いを生じます。そのためある程度乾燥させたものが使われています。
伐採後、木材はある程度までは容易に乾燥が進みます。しかし、建材として使用するのに適した含水率(およそ15%)まではなかなか乾燥が進みません。特に杉は水が抜けにくい性質があります。
時間がかかるということは、管理に手間がかかるということです。コストや出荷納期に影響が出てしまいます。
昔は自然乾燥が普通でしたが、このような理由から今では人工的に機械で乾燥させる方法が主流になっています。乾燥させた木材はKD材(未乾燥のものはグリーン材)と呼ばれ市場に出回っています。
含水率の数値的には安定し建築後の割れは少なくなると思われますが、「色艶が無くなる」「香りが減る」などの弊害も出てくるようです。私も実際大工さんから「木がパサパサする」との声を聞いたことがあります。
このことに対し疑問を持ち、通常とは異なる木材乾燥方法「水中乾燥」を推進している方がおられます。
水中乾燥とは?
当然乾燥させるには水に当てないことが常識だと思っていましたが、そうとも言えないという考え方です。
昔は木を運ぶため川の流れを利用していました。そして貯木のためにも水に浮かべていました。木場の光景が思い浮かびますね。
実はその水に漬けるという行為が、木の乾燥には良い効果を与えるらしいのです。
昔のように木を一度水に漬ける期間を経てから乾燥させると、木のアク(樹液成分)が抜けその後の乾燥もスムーズにいく。
先人達はそのことを知恵として知っていたが、いつのまにかただの「貯木場」となってしまった。
と語っておられました。
木を一旦水に漬けてから乾燥をスタートさせる。すると割れも少なく木肌がきれいで香りも残る。
クセのある自然素材を使う昔からの工夫・知恵。素敵だと思います。
木材の天日干し
やはり最近では見かけることが少なくなりましたが、木の板を立てかけたりして天日干しする光景がありました。
屋外なのでもちろん雨に濡れることもありますが、これも上記の水中乾燥と同じような効果と「木材を一度濡らした方がかえって乾燥しやすい」という効果があるようです。
濡れるのになぜ乾燥が進みやすいかと言うと、毛細管現象により木の中の水分が誘引されるから。
完全に乾燥させるため、最後は屋内で保管することが必要ですが、木材中にまだ水分が残っているある程度の段階までは、天日干しは有効な方法のようです。
ただし、これらの方法は時間と手間がかかる分、木材価格も高くなることは避けられず、近年ではより短期間・短時間で木材を乾燥できる人工乾燥・機械乾燥が一般的になっています。
やむを得ず残念なことですが、残していきたい先人の知恵であり、こだわりの逸品には採用したい方法です。
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