モノとしての注文住宅を考える

注文住宅は「複雑で」「特殊な」商品

注文住宅

とても近くにあるけれど、とても遠いようなモノ。それが注文住宅です。

改めてどんな商品か考えてみると、複雑で特殊な商品であることが浮かび上がってきます。それぞれの特徴を細かく見ていくことにより、どういう点を意識して住宅選びをしなければならないか、そのポイントが掴めるはずです。

では項目ごとに見ていきましょう。


― 目次 ー

1.最高額商品である

まず頭に思い浮かぶのが「高い」ものだ、ということではないでしょうか?

多くの方が年収の数倍ものお金をかけ、長期の住宅ローンを組みます。おそらく普通の人が購入する一番高額な商品です。

新築で注文住宅を建てた場合、今の経済状況の中ではもう一度建て替えることができる人はますます少なくなるでしょう。

つまりリスクが大きい商品であるとも言えます。それだけに住宅(メーカー)選びには慎重にならざるを得ません。

2.受注生産品である

このことがキーポイントです。

分譲・建売住宅と異なりこれから作るものなので、購入(契約)時に完成した姿を確認することができません。

注文住宅メーカーとの契約は、「請負」という形になります。約束のことです。

ですから、「どんな約束であるか」と「約束を守れる相手であるか」を確認することが最も重要になります。

3.現場生産品である

住宅という製品は工場での製作では完結せず、必ず現場作業が伴います。住宅の品質がほかの工業製品と違い一定しないのも、ここに理由があります。

多少の欠陥は当たり前とまでは言わないにしろ、我慢は必要という風潮が長年ありました。住宅産業が 「クレーム産業」 と言われる所以です。

しかし近年、注文住宅の質が変わりつつあります。

社会の出来事に伴い、シックハウス法制化、品確法の制定(性能表示制度の導入)など、市場や行政が 「顧客中心主義」 に変わってきており、「住宅はほかの産業・商品とは違う」と言う考え方は通らなくなってきています。

4.不動産商品である

当たり前のことですが、読んで字の如く動かない(持って歩けない)資産です。「土地と切り離すことが出来ない」「建物だけでは存在しえない」ということが言えます。

一方、転勤などの事情により売却する場合もあり、大きな資産にもなり得ます。

税法上の木造住宅の法定耐用年数は22年

海外では歴史ある建物のほうが価値があると言われていますが、日本では二束三文。

中古市場が活性化しないのもこういう制度が原因とも言われています。

おかしいですよね。

5.税金が掛かる

購入時にかかる税金

土地にも建物にも手に入れる時に「不動産取得税」という税金が掛かります。登記する時にも関連する税金が掛かります。

消費税については土地には掛からず、建物のみとなります。現在8%(近い将来10%予定)ですので、かなりの額になります。

(例:2000万円×8%=160万円)

継続的に毎年かかる税金

固定資産税と都市計画税(市街化区域のみ)があります。

場合によってかかる税金

相続税の対象にもなります。

住まいの税金参考ページ

住宅の税制

住まいの税金、住まい給付金、税金の特例・控除制度・軽減措置についてまとめてあります。

補助金・助成制度

高額な家だからこそ、建てるときにぜひ利用したいのが補助金・助成制度です。住宅エコポイントについても記載しました。

6.長期間使用する

価格が高いことに伴い、やはり個人では一番長期間使用する商品になるでしょう。

「日本の住宅は寿命が短い」と言われてきましたが、近年の住宅は品質・性能が向上し、高耐久化しています。

それゆえメリットも大きいですが、デメリットがあった場合は、かえって生活に永く影響を及ぼします。

また、住み心地が分かるのも住んでみてからですし、不具合が顕在化するのが数年後というケースも多くあります。

だからこそ建てる前にする住宅計画の比較・検証が重要なのです。

7.メンテナンスが必要

モノであれば使えば(場合によっては使わなくても)痛むのは当然です。「〇〇年間保証」と言っても、決してメンテナンスが要らない訳ではありません。

しかし、他の商品と大きく違うのは、かかる費用がかなり大きいということです。

特に屋根・外壁、窓を含めた開口部は、雨風・太陽光による紫外線の影響を大きく受けます。

補修・営繕計画も含めた見通しが必要となります。

8.中身が見えにくい

見える部分

注文住宅はこれから作るものですから、設計段階ではどんな家ができるのか、細部までは想像がつかないことが一般的でしょう。工事途中の確認は、勘違いが無いよう時には必要です

見えない部分

一方、住宅は出来上がってしまえば中身(天井裏・壁の中・床下など)は見えません。見た目も大事ですが、人間と同じように中身こそが大事です。

見えない中身に関しては、「どうやって作られているのか?」ー この観点がポイントになってきます。

それを確認するため現場に張り付いていることなど不可能です。それよりもを信用できる住宅メーカーを選ぶこと。このことが何よりも重要なのではないでしょうか?

9.価格を比較しにくい

商品構成が複雑で高い安いの判別がつきにくいのが、住宅選びの難しさです。各住宅メーカーの見積項目が異なることもこの要因の一つです。

金額の差にはそれなりの理由があります。建築に精通している人ならば品質が価格に見合うか判別がつきますが、一般の方は比較判定するのにかなりの時間を要します。

そして、材料を使った経験・現場で施工した経験、つまりノウハウを持っていないため、良し悪しの判断をつけるのは難しいものと思われます。

そういったことから、内訳・内容ではなくどうしても総額で判定することになりがちです。

適正な価格で家を建てるためには

「自分たちが希望する家」「適正な価格で建てる」ためには、まず「見積り項目ごとにABC評価」をし、「重要視する度合いに応じて、各項目にかける費用を加減していく」必要があります。

その上でそれぞれの住宅メーカーの見積価格を比較するためには、このような作業を経て再検証することになります。

10.品質基準が曖昧

「数値上の基準」

建築基準法やいわゆる品確法、住宅ローンを組む上での基準など、様々な品質基準があります。自分たちが希望する家に応じ、これらの「数値上の基準」に適合させることがまずは必要になります。制度は複雑ですが、これらは整理すれば分かるものであり、ルールですから納得しやすいものです。

「出来栄えの基準」

では、「見た目の出来ばえの基準」(ひび、ムラ、汚れ、隙間、ズレなどのこと)はどうなのでしょうか?

実は、目視判断が中心であり、基準が曖昧なのです。しかし、私たちはやはりこういう見栄えが気になるところであり、心に引っ掛かることがあると、長い時間ストレスを引きずります。

経験上の判断が優先される部分でもあるので、住宅メーカーに「この程度は大丈夫ですよ」と言われれば強く言い返すこともできません。実際それが適正なのかどうかは分からなくても経験がないので、疑問を抱えつつもしぶしぶ承諾せざるを得ないのです。

適正かどうか判断するには?

気になる部分があった場合は、家を建てているメーカーの人間ではない、しがらみのない第三者のプロの意見を聞いてみることをお勧めします。

11.消費者の評価(批評)を受けにくい

一般商品の場合

食品や日用品、また洋服や飲食店、そして高額商品では旅行や車でも、消費者は以前の購入経験を活かして次回の商品購入に役立てることが出来ます。

プラスの評価をする場合は、また同じ商品・同じメーカーを選べば良いですし、反対にマイナスの評価をする場合は、違う商品・メーカーを選べば良いわけです。

消費者は「次も買う/次は買わない」という行動で、無言の批評をすることが出来るのです。

この評価は売れ行きという形で生産者や市場に伝わり、そのことにより商品は改善・洗練され、淘汰されていきます。そして、品質の向上につながっていきます。

住宅の場合

しかし、住宅という商品はそうはいきません。

なぜなら、なかなか買い替える(住み替える)ことが出来ない、できたとしても数十年先なので、「次は買わない・選ばない」という無言の批評自体できない、したとしても意味を成さなくなります。

つまり、注文住宅メーカーや住宅業界に消費者の評価という反応を伝えることが出来ず、商品の改善が進まないということなのです。

住宅において特にこの特殊性が「古い体質だ」「遅れている業界」と言われる業界の特徴につながっているのです。悪く考えれば、「売ったもん勝ち」「商品は見た目がよければ良い」という会社が生まれかねない背景です。

消費者も過去の評価が分からないからこそ、家を建てる場合、ブランドや見た目に頼りがちになってしまうのではないでしょうか。

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