日本の住宅建築システムの変遷と特徴

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大工・棟梁の時代

従来、日本の家を建てていたのは「大工」さんです。現在でも、木造住宅を施工するのは大工ですが、受注や設計・全体の現場管理はその役割の多くが住宅メーカーに移行しています。

親方(責任者)は棟梁とも呼ばれ、自分で図面を引き材料を選び、時には複数の大工さんに仕事を分担し、「瓦屋」さんや「左官屋」さんなど他の職方も手配しながら、1軒の家をまとめていました。

茨城県を含め、今でも各地には相当数の「古民家」と呼ばれる立派な住宅が現役で利用され、あるいは保存され残っています。これらの建物は、寺社仏閣に比べると小規模で目立たない建物ですが、同様に日本の技術・文化の誇りと言えるでしょう。

近年、古民家を手直しして住む方や、旅館・飲食店・店舗として活用される事例が増え、その価値が改めて見直されています。

現在の住宅建築システム

時代は変わり、家そのものが複雑になり、家づくりは住宅メーカーが総合的に行うことが多くなりました。受注をし、設計・施工まで一貫して請負うスタイルが一般的です。

しかし、社内の実務は分業化・システム化されており、大きくは営業・設計・工事に分かれています。

工務店が大工を社員として抱え、自社で主となる構造の施工をする例も僅かながら残っていますが、多くは住宅メーカーが仕事を受注し、工種ごとに各専門工事業者に施工を依頼しています。

それに伴い、木工事を受け持つ大工も他職種と同系列となりました。

大規模住宅メーカーの特徴

大きな組織では、営業部の中にさらに宣伝企画部門があり、また設計部内に積算部門があります。各部門はより専門化し、技術力は磨かれます。

反面、全てを見通すことができにくくなるので、各部門の連携が大切になってきます。また、全体を見渡す統括責任者の立場が必要になります。

CMや雑誌による広告を活用する大規模な宣伝展開をしており、それにより知名度やブランドイメージは高くなります。

新しい技術や国の政策に合わせた商品を開発するのが得意です。ただし、その分価格は高くなる傾向があります。

中小住宅メーカーの特徴

逆に小さな組織では、複数の仕事を兼任、もしくは一人で全てをこなす例もあります。

全体を見ることができるので一貫性がありますが、専門性は低くなります。

丁寧な仕事をしていても、設計や打合せ・現場に時間を取られてしまうので、宣伝広告に力を入れることがしにくくなります。その分、大手より安く建てることができます。

良くも悪くも経営者の意向が強く反映されます。

「管理」と「監理」

一般的には分かりにくいですが、この二つには違いがあります。

住宅メーカーが、工事を適切に進めるためにするのが「現場管理」であり、図面どおりに建物が作られているか確認するのが「工事監理」です。

設計事務所が設計を受け持つ場合は、注文住宅メーカーの代わりに監理することが多くなります。

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